カールスバーグのカシミアグリーン

なんといってもこの冬最大のいいことがあった。それはカシミアのセーターを綺麗な大好きな人から貰ったことで、私はされるがままに渡されて即着させられたのである。いい雰囲気で、珍しくビールなんて飲みながらサッカーの国際試合を一緒にテレビで見ていたのに、下着を脱がされることなく服だけを脱がされ、裾も袖も長すぎるそれを着させられた。ちょっと期待したのに、延長が終わってないせいかな。暖かいそれは幸せ以外に形容しがたい着心地で、薄いのに暖かいという冬物の至上命題をすんなり解決していた。願わくば、袖さえもう少し短ければ、というかジャストサイズならば良いものを。確実にこれはプロシュートのサイズのものであって、細くても体格のいい彼のサイズは余らないわけがなかった。
「すっごいうれしい、ありがとう。けどおっきい」
「部屋着にいい。」
「部屋着にはもったいない暖かさだなあ」
袖が長い、と適当に捲ってお礼の代わりにマリエはプロシュートの頬にキスをした。襟ぐりも開いているし、なんていうか最初からそのつもりで買ったのではないかというのが彼女の見立てだ。プロシュートは瓶が当たらないよう顔を外してビールを一口煽るとそのままマリエを膝の上に向き合うように呼び、マリエがそれに従うとするりとなめらかなカシミアの上を撫でる。
「着る毛布にはちょうど良いんだがな」
テレビが見えないとマリエがプロシュートの首に手を回して画面の方を向けば、プロシュートは寒いからやめろと彼女を元の姿勢に戻す。ただただ向かいあって抱かれているだけの状態を望んでいるのか、マリエと不思議に思いながらそれに従い、頭ををプロシュートの肩に置いていれば、はじめて向き合うこの姿勢はなんとも呼吸が近く感じることに気付く。すこしアルコールの匂いのする息と、展開に応じて上がる声が近く、ダイレクトに身体に響くことに脱がされるよりずっと不思議な気持ちになっていた。
やたらどぎまぎして来た頃にちょうど点差も開かずに試合が終わり、お子さまは寝る時間だな?とプロシュートに問われても、マリエは顔を上げられずにいた。そのまま子守唄なんかを珍しく鼻歌で歌ってくるものだから、これは確信犯に違いない。いつの間にかとめていた息を吐けば、マリエはいつまでたってもバンビーナだな、と笑う声がしてマリエはやっと上を向いた。おやすみのキスにしては重いものが降ってきて、一番お子さま扱いしてないのはだれだ、と思いながら抵抗のようにプロシュートの一番下の髪留めを解いた。
20151213 chloe, as clap