なかよくけんかしな
紙で指を切ってしまったのをメローネに見られた。恥ずかしいなあと思って
マリエは立ち上がり、絆創膏を探そうとしたら向かいにいたメローネがその指をぺろ、と舐めてきたものだからついネコみたい、と感想を漏らしてしまった。それって褒めてなくない?と言いながらもメローネは
マリエの手を舐めるのを止めない。
「ネコが家に入り込んでるって知ったらきっとボスは捨てて来なさいって言うわね」
「俺は捨てネコか」
ひどいにゃあ、だなんて成人男性が言うのにはかなり抵抗のある言葉さえ無抵抗にメローネはじゃれつく。ひどいにゃあ、生き物を見殺しにするなんてひどい女だにゃあ。
「あら、ひどい女のほうが”母親向き”でしょう」
「いやあ君を殺してまで子供は欲しくないね、ちゃんとした手順の子供のことならもっと母性が欲しいと思うんだけど」
「嫌ね、マリアじゃないんだからセックスしないで子供ができるわけないでしょ」
「俺はいつだって歓迎さ、まあ産休なんてこの職場にはないけど」
メローネは手首をぐいと掴んで
マリエの身を寄せる。空いている手で腰のラインをたどりながら、ミニワンピースの裾をめくって侵入し、その肌を直に触れる。珍しくガーターなんて履いてやがる。いつも色気のないタイツばっかりなのに。メローネとしてはパンティストッキングのほうがよっぽど好きだったが、何の指導が入ったのだろうか。
「へーえ!下着はやる気じゃん」
「うるさい!」
「うんうん、下着のエロさと反応のガキさがアンバランスでいいねえ」
ぱちんと吊紐を弾いてメローネは笑う。
マリエは動けず、ただ捉えられていない方の手でメローネの服の肩を掴むばかりだった。
「上からだと胸も見えるなこの服。誰の見立てだよ」
「離してよお」
「嫌だね」
おあつらえ向きに紐のついた下着を履いていることが指先に伝わってくる。引っ張ればあ、と小さい気の抜けた声がして、メローネの衣服にこもる力が一気になくなったことが伝わってきた。自分の髪が向かいの女の首に落ちている様子を見るのは案外いいものだなあ、やはり切らなくて正解だった。そんな他所事を考えながらメローネにはそのままもう片方の紐も引っ張って解いてしまう。下では必死に足を閉じようとしているけれど、足の間に自分の足を挟んでしまったものだから抵抗は無意味に終わり、白地に青い糸で刺繍のされた下着は床に落ちるばかりだった。
「
マリエさあ、これは本気すぎだって」
一体誰を落とすつもりだったの。そう囁やけば力なく
マリエはその場に座り込もうとしたが、メローネにはさらさらそのまま座らせる気なんてなく、片手で支えながらさっきまで仕事をしていた机の上に
マリエを乗せる。書類を除けてーーこればかりは汚したら自分も怒られるだろうからーー座らせた
マリエの足の間に自分が立ち、これはこれでいい遊び方かもしれないと考えつく。願わくば
マリエが眼鏡をかけていたらもっと良いのだけれど。
「なあに、お兄さんに言えないような相手でも落とすつもりだったの?」
でもお前花すら持って帰ってきたこと無いじゃん?そう言いながらメローネはニット地のそのワンピースをたくし上げる。慌てたように手でそれを戻そうとする
マリエをよそにメローネはその口を閉じない。
「俺だったら
マリエのことくらい、一週間くらいなら幸せにしてあげるんだけどなあ」
「なにそれ、日数がリアルで笑えないんだけど、っていうかやめてってば」
「結局同業者じゃないと続かないって、俺にしとけってば」
どうせヴァージンじゃないならやってから決めようぜ、なんて言ったら真っ赤な目をして
マリエはメローネのことを見上げていた。
「メローネだからこういうふうにしたくないのに」
「あれ、そんなに嫌われてたっけ」
じれったいなあと思いながらメローネは首から指を這わせて先ほど見ていた風景の先に指を伸ばす。上もセットかあ、マジじゃんだなんて思いながらやわらかい丘を指で押してはその反発を喜んでいた。小さい時にケーキに指を突っ込んでみたかった気持ちにこれは似ている。
「あのさあ、こんなカッコしてたらさあ、俺じゃなくてもお前のこと気になってる男とあったらこういう羽目になってたと思うよ」
「ねえメローネ……」
「なあに、ネコっぽいのがいいって?」
「それもいいんだけど、」
「じゃあ何、俺そろそろ我慢なんないんだけど、本当に嫌なら止めるくらいの優しさはまだ持ってるよ」
額を付けて問えば、今まで見えなかった
マリエの睫毛の長さがみえる。ディ・モールトベネ。湿っている睫毛、物をいう目、責められているみたいで最高だ。鼻が当たっているから自分の鼻息も伝わっているだろうがそんなのもうどうでもいい。そうメローネは興奮しながら服を脱ぎかける。手袋を脱ぎ捨て、さっき落とした下着のあたりに投げる。見えていないからどこに行ったかなんて知らないけど、これ以上するならもう無用の長物だ。
「メローネのこと、夜に誘おうと思ってたのに」
「マジで?」
「早漏すぎるし、もっと優しくしてよ」
そりゃ最高だ。ディ・モールトベネの極地だよ。そう言いながらメローネは推定位置にある
マリエの唇を攫い、その唇がくぐもった抵抗の音を出してもそれを止めはしなかった。ばしょ、かえてよ、と息継ぎの度に漏らすその声に、早漏って言ったのはお前だろと返しながら、メローネは時計を見遣りつつ、あと30分もあれば十分じゃないかと
マリエのワンピースの肩を下ろした。残念ながら
マリエの非難は聞き遂げられそうもなく、当初の目的だけが達成されたことだけは正しい。
20151212 chloe,