さやかに星はきらめき
ぎしぎしと音を立ててマットレスが鳴る。御影に向かい合って上に座り、その腰を揺らす彼女は白い首を御影の目の前に晒しながらびくびくと身を震わせ果ててはしなだれかかる。御影はそんな彼女の腰を掴んだまま――息が上がったままの彼女はやだやだ、とそれを拒否するが――果てた彼女の身体を揺らしては締め付けを楽しみ、一番奥にゆっくり精液を吐き出す。目の前に差し出された首筋にむしゃぶりつきながら、御影はその首にかかったままの細い鎖を舌で避け、その下を吸って消印のようにマーキングをする。来週からも授業があるとは聞いていたけれど、そんなことはどうでもよかった。きっと後でバスルームでかわいらしい抗議の声が上がるのだろう、と思いながら御影は顔を上げ、上気しきった彼女の唇を求めて意識を自分に向ける。こじろうさん、と掠れた声が繋がった唇の奥からして、御影はその声を求めて舌を滑り込ませる。
***
改めてですが、今年のクリスマスは会えません。講義があります。そういう通知が来たのはクリスマス前の週末で、事前に知っていたにも関わらず夜送られたその通知をみて寂しい思いをする朝があった。
授業があるのは仕方がない。何を言うでもなく、自分たちの関係の最優先事項は自分たちの生活だった。彼女は大学、御影は仕事。それぞれの生活があり、居住地も遠いのだからたまの休みに会うことだけを楽しみにこの頃を過ごしていた。彼女の休みは平均的な大学生のそれであるから、長期休暇は調整のしようもある。しかし普通の週末なんかは難しくて――時折連休に連れ立つことはあるが――彼女と生で会ったのは先月の大学祭に会いに行ったのが最後だった。その時に既にクリスマスに語学の講義があって休みを作れそうもないことは知らされていたし、御影とて本業の観光牧場のクリスマスは書き入れ時であるから休みを取れるはずもない。去年までの職場のクリスマスパーティーに参加するよりもずっと気は楽だけれど、あれはあれで今となっては心安いものだったとも思う。一般的な職場の人間関係はあれど、為すべき業務は規定されていて――さらに会場の片隅で着飾った彼女とグラスを交わし、プレゼントを偶然に交換し合うことができる機会ではあったのだから。
その週のやり取りはいつもどおりだった。早く起きるのは御影の方で、映り込む窓の外が暗くて室内を反射するようになったので少し部屋は片付けるようになった。彼女の返事は季節が深まるにつれて少しだけゆっくりになって、相変わらず写真は送ってくれない。冬になって起きる時間もすこし遅れているのだろう、と御影は去年までのホームルームの時間の彼女の表情を思い出す。朝から眠そうな顔をしていたのはいつだってセーターを着ている季節だった。それでも、朝のレスポンスが返ってくるのだからきちんと授業に出ていることは疑う余地もない。
クリスマス前後の御影牧場は、山の中にあるにしては賑わいがある。それはクリスマス・イブとクリスマス当日だけ、ライトアップを実施して夜まで営業していることと、山であるから街の夜景も見えることが起因しているのだが、今年は特に人出が多かった。最近広告露出の一貫でクリスマスマーケットと、牧場産の乳製品を用いたフードマルシェが複数のメディアで取り上げられたからだろう。その催しを決めたのは母であったが、御影はクリスマスマーケットに留学中の風景が蘇り、かつての一人のクリスマスの日々を思い出しては物悲しくなる。
それを払拭するかのようにサンタ帽を被り、来訪客を遠くで眺めながら牛舎に入り浸っているのが御影の今年のクリスマスだった。夕刻を過ぎ、搾乳体験も乗馬体験も、全てのアクティビティはクローズしてしまったからもう庭園とクリスマスマーケット一帯にしか人もいない。物陰のベンチに座り、彼女からのメッセージがあるか端末を開けば幾らか通知が来ていて、御影は軍手を外して画面をスライドしてそのメッセージを確認する。
小次郎さん、実は遊びに来ています。メリークリスマスと気の抜けたスタンプとともに送られていたメッセージと、彼女の自撮り。その背景はよく見知ったこの土地で――手に持っているラクレットは確かに今年売り出している商品だった。通知は一時間と少し前で、写真中の彼女は陽が暮れ切っていないせいで少しまぶしそうな顔をしている。すっかり今は陽も暮れきってライティングと街灯のみが敷地内を照らしているから、きっとあの大きな目にはライティングが映り込んでいるのだろう。御影はそのまま通話ボタンを押し、ばかにあかるい呼び出し音を耳に流しながら彼女の応答を待つ。聞きたいことはたくさんあった。なぜここへ、いまどこに。数コールのあと、はあい、と彼女の声が端末からして御影はよお、と返事をする。
「小次郎さん、まだお仕事中では?」
「休憩中だよ」
「ふふふ、ほんとかなあ」
がやがやした背景の音からすると、彼女は人だかりのなかにいるようだった。御影はライトアップの中心の広場の方向を見ながらまだいるかどうか内心期待してしまう。
「あのね、昼に講義が終わったから……そのまま遊びに来たの」
「そういうのは、先に言うもんだ」
「びっくりさせたかったんだもん」
「十分びっくりしてるよ。それで、まだいるのか?」
うん――その返事に御影はついベンチから立ち上がる。ちょっと顔を見せてくれよ、と問えば、どこに行けばいいですか? だなんて返事に言葉が詰まる。確かに、人目はかなりあるし、曲がりなりにも職場である。自分のいるエリアはとうに人払いされているが、外来のお客様であるところの彼女がこんなところに迷い込んでいては、訝しがる者もいるだろう。それに学校帰りにそのまま来たとなれば、牧場の奥のエリアに立ち入るような格好でもないだろうし。御影は迷った末に出入り口から一番距離のあるハーブ園の入口を指定し、足を向ける。その間も通話は繋げたまま、彼女はぽつぽつと話すのだった。
「すっごい広いですよね。今日迷っちゃいました」
「まあた、地図見なかったんだろう」
「小次郎さんどこかにいるかなあって探してたんですよ」
あとは乗馬体験と、ハーブ園もみてきました! と電話口の彼女は興奮気味に話す。そんなことであれば、なおさら先に連絡してくれればよかったものを。彼女が馬に乗るというであれば、自分が引いてやったのになあと思う。ここで乗るよりも別のところで自ら教えるのもなお選択肢としては良かった。楽しかったなら良かったが、ちょっと残念だ。
御影がハーブ園の入口についたときには、入り口のベンチに座って通話をしたままの彼女がいた。約一ヶ月ぶりに見た彼女はふかふかとしたコートを着ていて、通学用と思しき大きなカバンをその膝の上に置いている。
こじろうさん、と彼女は自分の影に気がついて右手を挙げ――きちんと今日もその指には以前贈った指輪が嵌っていて、僅かな街灯を反射している――ベンチを立ってこっちに駆け寄ってくる。御影は腕の中に飛び込んできた彼女を抱きしめて、胸いっぱいにその匂いを吸いながらふかふかのコートの背に手を回す。甘いシャンプーの香りがして、やわらかな熱い身体がすっぽりと自分の腕の中に収まっている。先月は腕を組んでは嬉しそうにもたれ掛かってきた身体が、うれしそうに自分にくっついているのはいつ見ても愛おしい。
「久しぶりですね」
「ああ、そうだな」
「……安心します」
自分の作業着の中で、布越しに声がするのが面白い。片手を彼女の髪に通せども彼女は顔を上げることなく自分の胸元にくっついて離れない。さらさらと指を滑る彼女の髪は自分のそれとは違って真っ直ぐに指を離れてしまう。きれいに整えているのだろうが、いつもこうして御影は髪を崩してはもう! と言われるのが常だった。今はそんな文句も言わずに彼女はこうして顔を埋めている。
「急に来てごめんなさい」
「びっくりしたぞ?」
「どうしても会いたくなって。ほら、去年までずっとクリスマスは一緒だったから……」
「……そうだな」
午後休講だったから、つい。やっと顔を上げた彼女はそう告げた。忙しいのも知ってたんですけど、ごめんなさい。謝らなくていい、と言えば彼女は笑ってごまかしていた。我儘を言うときは大抵そうで、その顔を見ると頬をつまんで撫で回したくなってしまう。去年まででは考えられない距離感に、人目を忍ばずとも良い開放感に御影は満足を覚える。去年までは意識してしまったら頭に触れることもできなかったのに、こうして自分の勤務地で抱き合っているのなんて想像がついただろうか。
「ね、お願いが……あるんです」
「何だ」
「今日……わたし、駅の近くにホテルを取ってるんです」
夜、一緒に居たいです。そう言って彼女は少しだけ身を離して、肩に掛けた鞄の内ポケットからカードキーを取り出す。ロゴの刻まれたプラスチックカードを紙挟みから一枚抜き出して、御影の作業着の胸ポケットにそれを滑り込ませた。
「いつまでお仕事かかりますか?」
「おいおい……」
「……だめ?」
「だめじゃない」
よかったあ、と安堵の声がして、一層力強く彼女は御影の背中に手を回した。営業時間が終われば何を置いてもすぐに行こう、そう思って目安を告げれば、じゃあさきにお風呂に入っておきますねと返ってくる。化粧をした顔をじっくり見たかったのだが、彼女はくっつき虫になってしまって顔を上げないし、灯りも乏しいこのエリアではきちんとその細部まで見ることはできなかっただろう。
本当であればもうこのままさらって自分の部屋にでも担ぎ込んでしまいたいのだけれど、それをするには彼女の背伸びが台無しになってしまいそうでできるはずもなかった。せんせ、と甘えた声がして目線を下げれば、すこしつま先立ちをした彼女が自分を見つめている。期待している顔を宥めるように前髪をかき分けてキスをしたら外気に冷やされた彼女の額は冷たくて、驚いたような声が上がった。
***
「隣に聞こえるぞ」
「や、やだあ……やだやだあ……」
「ほーら、我慢できるだろ」
「い……っ……あっ……ッいじわる……こじろ……さあん」
大抵、声を抑えてご覧と言うと羞恥からか彼女の中がぎゅうと締まるのがわかる。腰だけを持ち上げさせた姿勢で、片頬を枕に押し付けたまま彼女は嬌声混じりにしゃくりあげていた。ぴくりと腰が跳ね上がって、御影の腰の動きに合わせて長く苦しげな声とともに彼女の身体から力が抜けていくのを感じる。何度目かの絶頂だろうか、腰から捲り上げた衣装のはだけたところの皮膚が粟立っていた。
御影はそっと皮膚に手を添えて波を楽しみながら腰から下腹部へ手を回す。両手を下腹部に回し、少しばかり持ち上げれば息も絶え絶えのはずの彼女はまた大きく声を上げ――溢れ出る蜜を零しながら御影を絞り上げる。
「だめ……っ……こじ……ろ……ちがうとこあた……あたるの……」
「だめじゃないよなあ」
こんなにぎゅってしてる、わかるか? そう問えばわかるとばかりに振られる頭に御影は満足を覚える。彼女を持ち上げたまま、大きく揺するように腰を打ち付け――少しばかり自分勝手に強く――なかをかき回しては奥を押し広げた。一番奥の深いところに触れる度に彼女は大きな息を吐き、ベッドに立てたままの膝を震えさせているのがわかって御影は興奮を深くする。何度目かの往来のあと、御影は一番奥にマーキングするかのようにすべてを吐き出しては彼女の背中にかぶさり、下腹部から上に手を進めてその身体を貪る。
性急に動かせば安物の化繊生地を破ってしまいそうだったが、こういう用途のものだ。あとで脱がすのも良いが、破ってもいいのかもしれないとまとまりを欠いた思考の中で御影は張り付いた衣装をたくし上げ、下からやわらかい乳のふくらみを追い上げた。もう……とぐったりした彼女の声が聞こえたが、御影は許せよ、と弁明を背中に直接こぼす。
久々の彼女の肌の質感に、手が止まることを知らない。前日にも、今日の夜にも支度をしていたんだろう、とその準備を思いながら、御影はこうしてそれらの準備を甘受したり、はてまたぐちゃぐちゃにかき乱すことしかできない。部屋で会った時にきちんと整えられ、角のついたカチューシャが留められていた頭は御影のせいで乱れている。ベッドの片隅にカチューシャも落ちている。当初はこれをつけたまま楽しんでいたのだった。
そのせいでこういった姿勢になったものだが、と思いながら御影はぬるりと腰を離す。このまま重なって崩れてしまいたい、そんな倦怠感に酔いながら御影は身体を起こし、たっぷりと液体の滞留している避妊具を外してはその口を縛り、デスクのティッシュペーパーに包んでそれを足元のくずかごに落とす。
彼女はすっかりその身を重力に任せてベッドに沈め、膝立ちだったはずが膝を伸ばしてうつ伏せのままゆっくり身体を上下させていた。脱ぎかけのベージュの衣装――トナカイを模した、化繊生地の薄くて丈の極端に短いワンピース――は胸の上までたくし上げられていて、後ほど起こす時に脱がせてしまおうと御影は思う。デスクに置かれていたペットボトルの水の蓋を切り、彼女のそばに一本投げては自分にも一本開けて口をつける。思ったよりも乾燥している室内のせいですっかり喉が乾いていた。
「こじろうさあん……」
「なんだ、もうちょっとゆっくりしとけ」
「いやだ、抱っこして……」
立たない腰を起こそうとして彼女は膝を再び立て、蹲るように身を起こしていた。腕を伸ばしてそのまま身を起こし、胸までたくし上げられている服を脱ぎたそうに腕を抜いていた。見かねて御影は手を伸ばし、子供のように両手を上に挙げさせ、衣装を持ち上げてすっぽり脱がせてしまう。ぷるんとそのときに胸が揺れ、そう言えば、風呂上がりにこれを着ていたから下着をつけていなかったのか、とそのふくらみの揺れに御影は視線を反らし、誰も座らないソファの上にトナカイの衣装を投げ捨てた。
「だっこして……」
両手を挙げたまま、彼女はその手を御影に伸ばす。御影はベッドの上に乗り上げながらその手を取って、自分の横に寝かせ直した。彼女の身体はぴったり御影に沿っていて、やわらかい曲線が自分の身体にくっつくのはどう考えても快い体験だった。身体に手を伸ばせばくすぐったさそうに笑い、御影に頭を預けて気楽にしていた。薄明かりの中で見る彼女はちょっと大人びているようで――少なくとも先月の学校祭の時期に、彼女のアパートでいるときよりはずっとそうだった――その起因は非日常感によるものだろうか。彼女が急に来訪したのも、幾らか彼女が大人になったことを示すようで御影は僅かに眩しく感じる。
「いいにおい」
「汗かいてるからやめろって」
「ううん、いい匂いするの」
ハーブと石鹸とこじろうさんの匂い、と彼女はうっとりと御影の中で目を伏せていた。同じ石鹸を使っているはずなのに、僅かに違う匂いがするのはいつも面白い体験で、体温の違いかなんの違いかわからないが、いつだって一緒に過ごした夜はこうして鼻を澄ませあうのが常だった。自分からすれば、彼女の肌はずっと甘い匂いがする。顔を近づけて、目を伏せたままの彼女の唇にキスをすれば少し湿った唇は簡単に御影を許し、さらに熱い舌が奥へと誘い出す。短い間隔で絡められる舌が御影の熱をまた煽るようで、胸がくすぐったい。
御影が空いている手を彼女の身体に伸ばせば、彼女も彼女でふふ、と笑い声を上げる。さっきは布の上でしか触れなかったやわらかい胸に指が沈み、御影の手のひらに固くふくらんだ乳首が押し付けられる。はりのある皮膚の質感を楽しみながら、御影はその手をゆっくりと動かし、押しつぶしては離し、指のさきでふくらみを楽しんでは固い頂点を掠め、舌の先の彼女の反応を伺う。漏れ出る吐息に交じる色のついた声に、不意に御影もまた下半身の充足を覚える。なあーにやってるんだ、と間隔の短さに自嘲しながらもやはりその欲求は抑えられないまま、御影は彼女を抱え直す。
「やだ、小次郎さん……」
「煽るなって」
僅かに開かれた瞳さえ自分を煽るようだった。睫毛が長いとこうも目の開き具合がわかりやすいのか、と思うと同時にそれは自分が彼女の目ばかりを見つめているせいなのだろうとも思う。やだ、だなんて笑いながら自分の胸に手をのばす彼女を見ていると、むくむくと妙案が浮かんでは、触れられた先からそれが実体となって御影の欲求をくすぐる。
「なあ、上に来いよ」
「どういうこと?」
「俺の上に跨ってみな。大丈夫。支えてやるから」
ええー、と満更でもなさそうな声が腕の中から上がる。さっきよりも大きく開いた目がいたずらっぽく自分を見つめ返していて、御影はこの子のこういう側面が好きだった、と思い出しては喉を震わせる。サイドテーブルにおきっぱなしの避妊具に腕を伸ばしている最中、不意に下半身に彼女の手が触れ――思わず振り返ればやっぱりさっきと同じ目線で御影のことを見上げている彼女は、手だけを御影の陰茎に伸ばし、指でゆっくりと勃ちかけのものを扱いていた。
「この上に、ってことですか?」
「……どこで覚えた」
「フフフ……ないしょ、です」
首を伸ばして彼女は口づけをせがむ。たどたどしく動く手のせいで、思ったよりも興奮の速度が増している。さっきまで長々と睦み合っていたはずなのに、どうもこうも急速に勢いを取り戻していておさまりがよろしくない。彼女の手の上から自分で握り込み、彼女の手ごと動かせば小さな声がうわ、と聞こえた。そうさせているのはお前なんだけどなあ……と御影は思いながら、十分に硬度を増した状態で彼女の手を取り、ベッドの上に投げられたままのタオルを代わりに掴ませる。その間に御影は準備を進め、ほら、とばかりにベッドの縁に座り直し、自分の膝を叩くのだった。
「さあおいで」
「はあい」
御影につづいてゆっくり起き上がった彼女は、御影の隣に一瞬座り、そこから肩に手を付きながらおずおずと膝の上に足を回す。目は本当に?ここに?と疑問を示していて――眉はハの字に垂れ下がっていた。彼女の秘部を指で導きながら、御影は自身に手を添え、彼女の着席を促した。先端がゆっくりと彼女の中に沈む最中、そろそろと降ろされる腰に御影は手を廻し、進み具合に応じて溢れる吐息を甘受する。
いつもの絶頂の最後のように、あぁ……と深い嬌声が彼女の喉の奥から漏れている。道半ばですでに満足そうであるものの、一方で御影は支えている腰を動かしたくて堪らない。性急にすべてを沈めこもうとすれば、ひときわ大きく声が溢れる。その割に彼女のなかはやわらかく熱く濡れそぼっていて、御影の陰茎を飲み込んで離さない。
ちゃぷちゃぷと浅く持ち上げては戻し、腰を揺り動かすのは面白い体験で、彼女はその動きに応じて喉から歓声を上げ、御影の目の前で胸を揺らしながら快感を味わっていた。この姿勢は、好きなように身体を弄るのにも向いていて――御影は首から肩まで口づけをしては、背中の粟立ちをなだめ、自らの腰を突き上げてその身体を揺らして反応を楽しむ。
「だめ、この姿勢」
「楽しそうじゃないか」
「すっごいおく……当たって……きもちいの」
「そりゃ良かったよ」
彼女も彼女で、快感の逃し先に自分を掴んでいるのが面白かった。当初乗せられていた肩の手は、いつのまにか自分の肩を掴んでいて、快感の大きな波が来る度にその爪が自分の皮膚に刺さる。きちんと整えられているにもかかわらず、薄い爪が刺さるくらいには指が御影にしがみついていて、小動物めいていると思う。視線を肩越しにずらせば、膝を支点に自分の上に乗っているせいで浮いた爪先がぴんと伸びているのもなおわかりやすく可愛らしかった。しかしそういう姿を見るとどうしても嗜虐的な気持ちになって、彼女を揺らす手に力が入ってしまうのはやや仕方ないとも言える。
そして大きく彼女の身体を持ち上げ、下ろし直す度になかがぎゅうとしまってびちゃびちゃとこぼれた蜜が御影の足を濡らす。終わりが近い、そう思ったのは何度目かの彼女の絶頂の直後で、彼女が白い首を御影の目の前に晒しながらびくびくと身を震わせ、ひときわなかを締め上げた時だった。御影は熱に浮いた彼女の身体がもたれかかるのをそのままに、腰を掴んだまま自分勝手に揺らし、自分を追い詰める射精感に正直にそのまま一番奥を貪るようにゆっくり中身を吐き出す。中で蠢いているのがどちらの拍動か、もうわからない。目の前に差し出された首筋にむしゃぶりつきながら、御影はその首にかかったままの細い鎖を舌で避け、その下を吸って消印のようにマーキングをいくつかつけた。それは確かに半年前の夏に渡したもので、いつだって彼女の襟元できらきらちいさな光を反射させている。
***
寝かしつける時に朝が早いからと断りをいれたものの、通常よりも通勤時間がかかる分御影の起床は早かった。寝ている彼女を起こさないように静かにベッドから出、布団をかけ直す。たくさん遊んだせいか彼女はぐっすり眠っていて、きっと朝のメッセージはゆっくりになるのだろう。枕元に直接渡しそびれたプレゼントを置き、御影はバスルームに向かいながらこれでは本当にサンタクロースになったような気すらして使い捨ての歯ブラシを水に通す。昨晩もらったばかりのプレゼントを開けるのは、昼にでもしようか――そう思いながら自分の寝起きの顔を眺めれば、いやに緩んだ顔がこっちを見つめていて、一人のバスルームでどうしようもなく笑ってしまうのだった。
20211224 chloe first post in pixiv and reprint in 20220601.