チェリーピンクの研究

足立さんて結構即物的というか俗っぽいよね。
そう言って情緒もなく服を脱いだマリエは下着姿のままで足立のベッドに潜り込んだ。ライトグレーのシーツ、ふとん、それからチェリーピンクのブラジャー。非難を物ともせず足立は誘ってんだろ、とただただベッドから物言う目を見据えたままスーツを脱ぎ捨ててそれに続く。さらさらしたシーツと布団にはさまって、狭いベッドの中でマウントポジションを取るのは難しいことではない。
「今日はダメ」
「生理はまだだろ?」
「すんごい頭痛いの、甘えさせて」
「うわ、風邪じゃないよね」
へ、ん、ず、つ、う、と腕の下のマリエはだるそうに音節を区切って足立に告げる。部屋の明かりから逃げるように足立の腕の下に隠れるので、面白くないと腕を伸ばすのをやめて抱きつけば苦しげなうめき声が聞こえたのでそれ以上遊ぶのをやめた。
「明日から当分雨って知ってたのに」
「へえ、天気がだめなの」
俗っぽいよね、と非難してくる割に君だって俗っぽい下着を着るじゃないか、あ、これは僕の趣味だったっけ。そんなことを思いながら足立は今週の天気予報を思い出す。正直そんなものどうでもよくて、洗濯物は室内干し、通勤は車の足立に天気予報は出勤後の聞き込みの面倒さを左右する存在でしかなかった。だから覚えていないし、天気と事件の関連を言う年下の探偵を思い出して少しばかりいらついてしまった。暗くしてと腕の中のマリエが言うので手っ取り早く手元のリモコンで照明を落とし、暗くしてってマリエが言うのなんてはじめてした時以来かな、なんてことを思い出してしまう。あのころはもうすこし地味な下着を着ていたっけなあ。
「あ」
「なにい……」
「弱ってる君みるの初めてかも」
「そうだっけ」
そうだよ、君っていつも元気にツンケンしてるからさ。そう言いながら足立は抱き方を変える。ちょっとは優しくしてやろう。そんな親切から体をすこし動かして片手で深く抱けば、珍しくいかないで……なんて小さく行ってくるものだから足立はすっかり飼育者の気持ちになり、よしよしと囁いて開いた手をその額に当てるのだった。こうされたかったを体現したのは、はじめての試みである。その手は拒否されず、に翌朝のアラームまでマリエの額と視界を温めた。




20151213 chloe, as clap