反復


足立 透様
拝啓
桜の花も散り、新生活も落ち着いてきたころでしょうか。体のほうも変わりなく過ごしていらっしゃられますか?

かしこまった文頭でごめんね。透に手紙なんて、書いたことがなかったからどういう書き出しにしようか迷った挙句にふつうの書き方にしてみました。これでも慣れてないのがばれちゃうね。
うちの会社の先輩に、彼氏さんが透と同じ職場の人が居て、透のことが話に出た時に手紙を書いてあげたら喜ぶ、と聞いたので早速書いてみた次第です。
ものすごく忙しいと聞いたのでお返事は結構です。いつか時間の空いたときに電話してくれたらうれしいけど、自分のことを優先してください。そつないというか要領だけはよかったのであまり心配はしていませんが、ストレスを貯めやすいという自覚は持って適度に忙しくね。
私のほうは変わりなく過ごしています。結局三次が取れたらまた就活しようかな。外資とかどうだろう?せっかく早く資格取れたんだから、今のうちに透に負けないくらい働いてみようかと思うの。
もうすぐ四季報の時期だから忙しくはなると思うけど、忙しいほうがかえってひとりの寂しさがまぎれるような気がします。だから安心してね。
最近自炊してもつい2人分でメニューを考えてしまうのが嫌です。ほんと余っちゃって困る。透が居てくれないとやっぱり自炊のしがいがないというか…。顔を見ていないとなんだか甘ったれた文面になっちゃった。はやく夏になって帰ってきてほしいと毎日思っています。帰ってきたら何が食べたいか考えておいてね。

これからどんどん暑くなりますが、ご自愛ください。  かしこ

 



そうだ、ロールキャベツがいい。 の作るトマトソースのやつが一番美味しい。
帰るのは夏なのにそんなメニューを伝えたら はどんな顔をするだろう。暑いからやだなあ、だなんて言いながらも近所のスーパーに買い物に行ってくれるに違いない。
そんなことを考えながら からの手紙をテキストのはじめのページに挟むと、足立は机の上を片付けた。
今日はもうやめにしよう。まだどうせ同期は勉強してるだろうけど別にいい。今日だけだ。最低限の予習はした。別にこれだけで差がつくとも思えないし、何より幸福な気分のまま法学なんてやる気になれなかった。
それよりも今週末電話をしよう。最初になんて言ったらいいのか考えながら寝よう。そう思ってライトを切る。