まだらの時間
足立さんって変態なんでしょ、そう言ってマリエは紺色のハイソックスに包まれた爪先でつうと足立のスラックスをなぞる。満更でもない顔で足立はその爪先の行方と、向かいのローテーブルに腰掛けるマリエの顔を交互に眺めていた。千鳥格子のスカートからまっすぐ生えている白い足のさきは見えそうもない。床に落ちている、折り目が強くついた黄色いスカーフはつい最近おろしたばかりなのを知っている。先週この部屋で足立が汚したからだ。大好きだった先輩が卒業するときにくれたとかいうくだらない思い出と一緒に、轡を噛ませてそのまま顔ごと汚して、拭いた。その女だってきっと君のことなんてもう忘れただろうし、いい頃合いだよ、だなんて言ったら泣いたのでそれも拭いた覚えがある。体液に汚れたそれをマリエのバイト先であるジュネスに捨てたのは単に家に置いておきたくなかっただけだが、それくらい価値の無いものとしての意味でもあった。幸い証拠品を袋にしまうことにはなれていた。
「知ってる、足立さん。このあいだのスカーフの先輩はね」
マリエの爪先はゆっくり足立の足の間を往復する。いつになくマリエの表情は嬉しそうで、足立はそれがひどく新鮮に思えた。泣き顔が似合いそうだと思って引っ掛け、事実泣かせてばかりであるからだ。
「都会に進学して、またこの制服を着て、男の人とデートしてお金を貰っているんだって」
「へえ、君は田舎で、現役で、男とこんなことしてもお金なんてもらえないのにね」
「足立さんから貰っちゃったら、足立さんに補導されちゃうもの」
「嫌だなあ、そんなことしたら僕だって捕まっちゃうだろ」
マリエの足が足立の足の上に無造作に投げられる。足立は帰ってきたままの格好で、座ったままカチャカチャと音を立ててベルトを外してスカーフの上に投げた。そのままボタンとジッパーを下げると器用にマリエは足をその隙間に滑り込ませた。
「脱いでないのに興奮してるなんてほんと変態みたい」
「僕は君の同級生みたいに青かないからねえ、裸にばかり固執するのは高校生の特権だよ」
「あはは、足立さんも高校生のときは裸にばっかり固執してたの」
「僕は大人だったから、そんな馬鹿みたいにグラビアばっかり見てなんかなかったよ」
「へえ、そうなんだ」
下着越しにマリエの体温が伝わる。おそらく向こうも逆に足立の体温を感じているのだろうが、その爪先は依然緩慢に足立をくすぐる。高校生のくせに馬鹿みたいに大人ぶりやがってとも思うが、いっそ脱がれて上に乗られるよりずっとこっちのほうが好きだった。
「今日は靴下をあげるわ」
「へえ、靴下に出せって言ってるのかい」
「したら犯罪でしょ」
ちらちらとマリエは器用に爪先で下着を手繰り、足立を弄ぶ。指が器用に使えるやつだなんてことを知らなかったなあと思いつつも足立はそれにされるがままに一切自分の手は動かさず、挑戦的にマリエの目を見ていた。この子のこんな目をクラスメイトは知らないだろう、ましてや転校生のあの、上司の甥っ子など。その友達だとかいうバイトの友達も知らないだろうし、彼女の親でも知り得ないだろう。おたくの娘さんは真面目に過ごしているのに本当は夜中に部屋を抜けだしてこんな年上の男の家で馬鹿みたいに大人ぶっているんだ。聞き込みで会った彼女の母親は彼女にとても似ている。
「ほら、下手くそだなあ。真面目な優等生ならもうちょっと上手くてもいいんじゃないの」
気持ちの昂ぶりについ足立は紺色の爪先を手にとってそれを動かした。引っ張ったせいで半分脱げかけたその靴下をかぶせて同意のないまま靴下と、それから露出したふくらはぎを汚す。
「大人をからかうんじゃあないよ」
そのまま脱がせた靴下で残渣を拭き、マリエのふくらはぎを拭きつつ足立は物足りなげに靴下を投げる。もう片足も脱がせたら、こちらを見上げるマリエの下着が見えたので、そのまま露出した爪先を口に含めばふふっと愉しげな嬌声が上がる。足立はそれを皮切りに、立ち上がってマリエをローテーブルに組み伏せ、セーラー服の脇のジッパーを下げた。
「僕は君が幾つかなんて知らないし、スカーフもない子なんだから、君の先輩みたいにそういうことなんだろうって理解していたっていくらでも言えるんだよ」
「大人ってずるい」
「大人で遊ぶからいけないんだ」
ガキみたいな下着の癖に。化学繊維の水色の下着を乱暴に脱がせながら足立はまだ未発達のマリエの体をいつものように噛んでは跡を付ける。
20151208 chloe,